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症例報告1 末梢性顔面神経麻痺に対する鍼灸治療

顔面神経麻痺(ラムゼイハント症候群)に対する鍼灸治療
≪序文≫
一般に末梢性顔面神経麻痺は6〜7割が自然回復するといわれている。しかし、約3〜4割の中には難治性に経過し、何らかの後遺症が残るケースが見受けられる。予後不良の見極めにはいくつかの評価ポイントがあり、柳原評価法による点数が10点以下(発症3週間後の時点)がよく用いられる。今回は患者様のご協力により予後不良に移行する可能性があった症例で鍼灸治療を行い、症状の改善がみられた症例を報告する。
≪症例≫
50代、男性
診断:ラムゼイハント症候群
主訴:右側顔面神経麻痺、嚥下がやや困難、右眼瞼が閉じられない事による右目の乾燥と痛み
≪病状経過≫
××年×月2日に舌と顎の動かしにくさを感じ、翌3日、舌と顎に加えて呂律が回りにくくなり右の瞼が閉じにくくなる。同日の夕刻に脳神経外科を受診し脳のMRI検査を受けた。時間外だったため胃腸科専門医師の診察となったが、脳と脳血管に異常がないのは確認される。医師からベル麻痺ではないかとの診断を受け、翌日に耳鼻科専門医の再受診をするように勧められる。
×月4日、自宅近くの耳鼻咽喉科を受診し「ベル麻痺」と診断され、薬を処方される。
×月7日、再診の為、同耳鼻咽喉科を受診。前回とは別の医師の診察となり、「ラムゼイハント症候群」との診断を受け抗ウィルス薬を処方される。更に大きな病院を受診するように告げられ紹介状を受け取る。
×月10日、地域の中核総合病院を受診し、新たな処方箋をもらう。
×月24日、症状の改善が思わしくないので、当鍼灸院受診。初診時の柳原評価法6点
≪鍼灸治療の内容≫
顔面への刺鍼、全身調整及び自律神経調整、頚・肩・背中の筋肉の筋緊張緩和処置(詳細につきましては割愛とさせていただきます)
≪各施術毎における柳原評価法の推移≫
施術評価(柳原法)グラフ

 

≪患者さまからの各回施術後の体の変化についてのまとめ≫
1回目施術後:水を飲むとき噎せることが多かったが少し改善して飲み易くなった。
2回目施術後:患側の眼瞼が閉じやすくなり、朝の目の痛みが和らぐ。
3回目施術後:更に瞼が閉じやすくなり、呂律もほぼ正常になる。嚥下も改善。
4回目施術後:3回目と変化が少ない。患側の瞼は閉じられるようになったが、患側のみ閉眼はできない。強く瞼を閉じられない。鼻の周りの違和感が残り、鼻をかむ時には患側は力めない。患側の額のしわ寄せの力が入らない。
5回目施術後:前回からあまり変化がない。施術後2〜3日程度は調子が良いが、日を追うごとに戻っていく感じがする。
6回目施術後:治療後に劇的によくなる感じはないが、全体的には少しずつ症状はよくなっている。寒くなって来た為か、気温が下がる日は調子が良くない。
7回目施術後:施術直後から数日間は顔面の違和感がかなり減った。しかし、それ以後は違和感が出始めて「口を濯ぐ」ことがうまくできず水が漏れてしまう事がある。ただ、表情は他人から見ても自然に戻ったと言われる。
8回目施術後:顔面の左右の非対称はほぼなくなり、見た目からは麻痺の様子はなくなる。しかし、疲れが溜まると患側の顔面、特に頬に違和感がでる。
≪施術者の意見≫
1回目から3回目までは施術をうける毎に体の改善変化を感じられた。具体的には顔面の表情筋の動きの改善はもちろんだが、首肩の筋肉の緊張が緩和し、体調面もよくなっているように感じた。その後、気候の変化や体調不良により一時的に症状の悪化する時期もあったようだが、施術回数毎に評価の点数は上がっていった。患者様の感想にもあるように、まず改善したのが瞼の動きである。瞼が閉じられないことによる目の乾燥からの強い痛みがあったが、早い段階で瞼の動きが改善しQOLを上げることができた。一方、最後まで症状が残ったのが頬周辺の違和感であった。頬筋であると思われるが、この筋肉がうまく動かせないことにより、飲食中に口から飲食物が口からこぼれてしまう。咀嚼に関係する筋肉をもう少し全体的にアプローチする必要があったのかもしれない。
柳原法では36点が治癒の目安と言われており、8回の施術で到達することができたので、顔面神経麻痺として治療は一旦終了とした。患者様はこれ以外にも肩や腰に症状を抱えているので、その後も月一での鍼灸治療を継続して受けている。
≪まとめ≫
鍼灸治療がどこまで末梢性顔面神経麻痺に対して有効であるかは、様々な意見があるのが実際のところであり、治療のファーストチョイスになっていない現状を見れば、その認知度はご承知の通りである。しかしながら、投薬で思うような効果が出ていないケースでは鍼灸治療を加えてみる価値はあると考える。鍼灸治療には治癒の基本となる睡眠・消化吸収・排泄・体液循環などを整えることができるからである。特に局所の血流改善には大きな効果があり患部の治癒には大きな役割を果たすと考える。更に症例を重ね鍼灸治療の良さが少しでも広まっていくことを期待したい。
最後に、今回の症例報告にご協力いただきました患者様に感謝の意を表し、まとめとする。

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